この記事は、止水工事を担当する現場監督だけでなく、補修設計を行うコンサルタントにも参考になるよう、施工側から見た注意点をまとめています。
止水工事は、施工を始めてから「どこまで止めるか」を考えると終わりが見えなくなりやすい工事です。
私は、止水工事では着手前にいろいろな前提条件を話したうえで、
「こうなったらここまでやる」
「この状態なら追加協議する」
という形で、状況ごとの着地点を決めておくことが大切だと考えています。

止水工事は「水がゼロ」で完了とは限らない
発注者側が、
「止水工事なのだから、漏水が完全にゼロになって当然」
と思っていると、施工側としてはかなり厳しくなります。
コンクリート内部の水みちは外からすべて確認できるわけではありません。
一つの漏水箇所を止めることで、別のひびや目地から水が出てくることもあります。
そのため施工前に、
- 止めると別の場所から出る可能性がある
- どこまで漏水を追いかけるのか
- 追加施工にどこまで予算を使えるのか
を説明して、認識を合わせておいた方がいいと思います。
まず元請と施工業者で現実的な範囲を整理する
私の経験では、まず元請と施工業者で施工条件を整理してから、発注者と話すことが多いです。
施工側で、
- 設計どおりの工法で本当に対応できるか
- 完全止水が現実的なのか
- 追加施工が必要になった場合どうするか
- どこを完了条件とするか
を整理したうえで発注者へ説明します。
いきなり発注者へ「どこまで止めますか」と聞くより、施工側から現実的な選択肢を提示した方が話を進めやすくなります。
設計に書いてある工法で目的を達成できるか確認する
設計図書に「急結材で止水」と書かれていても、それだけで本当に工事目的を達成できるとは限りません。
漏水量が多ければ、急結材だけでは乾いた状態を作れないこともあります。
逆に、多少の滲みが残っても次工程や使用上の支障がなく、設計上も急結材で処理する内容なら、そこで完了できる場合もあります。
大事なのは、
「設計に何と書いてあるか」だけではなく、その方法で今回やりたいことができるか
を着手前に判断することです。
難しいと判断した場合、私は一度施工して失敗してからではなく、着手前に協議するようにしています。
その際は、
「この条件ならこの方法」
「この状態なら別の方法へ変更」
というように、代替案まで分かる形にしておくと話がしやすくなります。
変更立会いが必要なら勝手に追加施工しない
案件によっては、追加施工のたびに変更立会いや協議が必要な場合があります。
その場合は、
設計箇所を施工
↓
漏水状況を確認
↓
変更協議・立会い
↓
承認後に追加施工
という流れを繰り返します。
ここで重要なのは、施工できるからといって勝手に追加し続けないことです。
追加施工を行う前に、
その施工分の費用が本当に認められるのか
を確認します。
止水工は追いかけようと思えばどこまでも追えてしまうことがあります。
施工したのに追加費用が認められない「やり損」にならないように、費用の扱いまで含めて協議しておくことが必要です。
最終的にどこで終わるかは工事目的で決める
止水を続けても漏水が完全にゼロにならないことがあります。
それでも、
- 次工程に支障がない
- 使用上問題がない
- 設計上求められている処置が完了している
のであれば、無理に追い続ける必要がない場合もあります。
設計が急結材による最終処理を想定していて、それで目的を達成できるのであれば、急結材で栓をして完了することもあります。
私は、止水工の完了条件は、
「水がゼロになったか」ではなく、工事の目的を満たしたか
で考える方が現実的だと思っています。
現場監督が着手前に確認したいこと
止水工事を始める前に、最低限次の点を確認しておいた方がいいと思います。
- 今回の工事で何を達成したいのか
- 設計工法で本当に目的を達成できるか
- 漏水が別箇所へ移った場合どこまで追うのか
- 追加施工は誰の承認が必要か
- 追加施工の費用は認められるのか
- どの状態を完了とするのか
この条件を施工前に整理しておけば、現場で漏水状況が変わっても判断しやすくなります。
止水工事は、施工技術だけでなく、着手前の条件整理と終点の決め方が重要な工事だと思います。
次の記事では、漏水箇所を確認するときに、エフロレッセンスと実際の漏水口をどう見分けるかを整理します。
参考:メーカー公開資料および実務経験をもとに再構成。施工時は設計図書・最新版の製品資料・仕様書・SDS等を確認してください。

