コンクリート構造物の漏水対策では、漏水部へ注入材を送り込み、水みちを塞ぐ注入止水工が使われます。
ただし、実際の施工は「穴を開けて材料を入れれば終わり」ではありません。
コンクリート内部の水みちは目で確認できないため、注入した材料が想定とは違う方向へ流れたり、離れた場所から出てきたりすることがあります。
そのため注入止水では、施工手順そのものより、注入したときの反応を見て次の施工を判断することが重要です。
この記事では、初めて注入止水工を担当する現場監督向けに、基本的な施工手順と、施工中にどこを見て判断するのかを整理します。

注入止水工の基本的な流れ
ショットプラグスリムのメーカー資料では、漏水部の確認後、漏水部周辺から斜めに穿孔し、プラグを設置して注入材を注入する流れが示されています。
穿孔径はφ9〜10mm、穿孔深さは100〜400mmとされています。
基本的な流れは、
漏水確認 → 穿孔 → プラグ設置 → 注入 → 効果確認 → 必要に応じて追加注入 → 注入孔閉塞
です。
ただし、実際の現場ではこの流れを一度行えば終わるとは限りません。
注入したときの反応を見ながら、水みちを探して施工を繰り返します。
穿孔では「漏水口」ではなく水みちを狙う
私の経験では、穿孔位置を決めるときは漏水口そのものだけを見るのではなく、
「この水がコンクリート内部のどこを通っているのか」
を考えます。
基本はメーカーの施工基準に沿って配置し、左右どちら側から注入したときに漏水状態が変化するかを確認します。
漏水が残った場合は、その漏水箇所に近い位置へ追加穿孔します。
ひび割れ位置がある程度読める場合は、私の場合は横から45°程度を一つの目安として、水みちへ当てる意識で穿孔します。
※45°は私の施工経験上の目安であり、メーカー規定値ではありません。
注入中は「どこから材料が出るか」を見る
注入を始めたら、注入量だけを見るのではなく、
漏水量が減ったか、漏水口から材料が出てきたか、別の孔や離れた箇所から材料が出てきたか
を確認します。
メーカー資料でも、注入液が他の漏水部へ回り、離れた箇所から流出する場合があることが示されています。
別の孔から注入した材料が、先に施工した孔から出てくれば、内部でその経路がつながっていると考える材料になります。
どの孔から注入したときに漏水状態が変わるのかを見ながら、効いている水みちを探します。
材料が入り続けるときは入れ続けない
注入していて、想定以上に材料が入り続ける場合があります。
このような場合、私の場合は内部の空隙や別の水みちへ材料が流れている可能性を疑います。
そのまま同じ孔から注入し続けるのではなく、
注入速度を変える → いったん止める → 別の孔から注入する
といった方法を試します。
そして、漏水量や材料の流出位置がどう変化するかを確認します。
「たくさん入った=効いている」とは限らない
という点は、現場で特に注意しています。
注入は「次へ進んで、あとで戻って確認」する
私の場合、1孔ごとに完全に硬化するまで待つのではなく、
注入 → 次の孔 → 次の孔
というように順番に施工します。
ある程度時間が経ったところで、最初に注入した箇所へ戻り、漏水状態を再確認します。
漏水量が落ちていれば、その水みちに注入材が効いていると判断します。
逆に漏水量がほとんど変わらなければ、別の水みちを通っている可能性を考えます。
その場合は、残っている漏水箇所の近くへ追加穿孔し、再度注入します。
実際の施工は、
注入 → 次孔 → 次孔 → 戻って確認 → 追加穿孔 → 再注入
という流れを繰り返しながら進めます。
注入終了は材料の流出と漏水量の変化で判断する
メーカー資料では、注入孔付近の漏水部から注入液が流出し始めたことが、注入完了を判断する一つの目安として示されています。
実際の施工では、私の場合はそれに加えて、
実際に漏水量が落ちたか
も確認します。
材料が漏水口から少し出てきて、漏水量も落ちているのであれば、その水みちにはある程度材料が回ったと判断します。
材料を出し続けること自体を目的にはせず、反応を見ながら次の孔へ移ります。
翌日確認してから最終判断する
注入直後に漏水が止まっていても、それだけでは最終判断にしません。
私は基本的に翌日も漏水状態を確認します。
最終的に重要なのは、
立会時に要求された状態を満たしているか
または、
次の施工に支障がない状態になっているか
です。
翌日に多少の漏水が残っていたとしても、発注者が工事目的を満たしていると判断し、次工程にも支障がなければ、その状態で完了になることもあります。
必要以上に漏水を追い続ければ、追加の穿孔、材料、施工時間が必要になります。
工事目的を満たした時点で施工を終えることも、施工管理上の重要な判断です。
注入後はプラグ撤去・注入孔を閉塞する
ショットプラグスリムでは、注入完了後にプラグを処理し、注入孔を急結止水セメントや水中硬化型エポキシパテなどで閉塞する手順がメーカー資料に示されています。
その後の表面処理や仕上げについては、設計図書や使用する工法に従って施工します。
まとめ
注入止水工では、決められた位置から材料を注入するだけではなく、現場の反応を見ながら水みちを探すことが重要です。
特に見るポイントは、
漏水量の変化・材料の流出位置・別孔とのつながり
です。
注入と確認を繰り返しながら効果のある水みちを探し、最終的には「完全に水がゼロになったか」ではなく、その工事で求められている目的を達成できたかで完了を判断します。
※本記事は、施工経験およびメーカー公開資料をもとに実務上の考え方を整理したものです。実施工では、設計図書、発注者・監督員との協議内容、使用製品の最新版の仕様書・施工要領書・SDS等を確認してください。

